新規患者数よりも「次回来院率」がクリニックの未来をつくる。

― 信頼を数字で見える化する ―

美容クリニックの数字を見るとき、皆さんはまず何を確認しますか?

「今月の売上はいくらだったか」

「新規患者様は何人来院されたか」

こうした数字を確認しているクリニックは多いと思います。もちろん、どちらも大切です。

しかし私は、クリニックをご支援するとき、新規患者数と同じくらい、その先にある数字を大切にしています。

それが、「次回来院率」です。

新規患者様が何人来てくださったのかだけではなく、その患者様のうち、何人がもう一度来てくださったのか。

ここを見ると、そのクリニックの「今」だけではなく、「これから」が見えてきます。


新規患者数は「出会い」、次回来院率は「信頼」

新しい患者様が来院してくださることは、クリニックにとって大切なことです。

数ある美容クリニックの中から見つけていただき、予約をして、実際に足を運んでくださった。

大切な「出会い」です。でも、私はそこで終わりではないと思っています。

患者様が、「またここで相談したい」「次もここで治療を受けたい」

「何かあったら、このクリニックに相談しよう」と思ってくださったか。

そこまで見て初めて、患者様との関係性が見えてきます。

私は、新規患者数は「出会い」を表す数字。次回来院率は「信頼」を表す数字。だと考えています。


新規患者数=出会い

次回来院率=信頼

数字の間に、どんな患者体験があったのか。私はそこを見ることを大切にしています。


新規患者様が100人来ても、その先は同じではない

例えば、同じ月に新規患者様が100人来院した2つのクリニックがあったとします。

Aクリニックでは30人が次回来院。Bクリニックでは70人が次回来院。

新規患者数だけを見れば、どちらも「100人」です。でも、その先は大きく違います。

だからこそ私は、「何人来たか」と同時に「何人戻ってきてくださったか」を見ることが大切だと思っています。


次回来院率とは?

次回来院率とは、初回来院された患者様のうち、その後もう一度来院された患者様の割合を見る指標です。

ここで一つ注意したいことがあります。

「次回予約を取った患者様」と「実際に次回来院された患者様」は同じではありません。

また、何日以内の再来を対象にするのかによっても数字は変わります。

そのため、まず院内で、

「自院では何を次回来院とするのか」

という定義を統一することが大切です。


この2つを分けることで、「予約までは取れているけれど来院につながっていない」

など、どこに課題があるのかが見えやすくなります。


次回来院率には「クリニック全体」が表れる

私が次回来院率を大切にしている理由があります。

それは、この数字にはクリニック全体の力が表れると考えているからです。

患者様が次回来院するかどうかは、施術結果だけでは決まりません。

受付での第一印象。

カウンセリング。

医師の診察。

看護師の声掛け。

施術中の安心感。

会計。

次回治療の説明。

お見送り。

患者様は、これらすべてを体験しています。

だから、次回来院率は医師だけの数字ではありません。

看護師だけの数字でもありません。受付やカウンセラーだけの数字でもありません。

クリニック全員でつくる数字です。


私は、次回来院率はチーム力を映す数字でもあると思っています。


数字が下がったとき「誰が悪い?」にしない

数字を見るようになると、注意したいことがあります。

次回来院率が下がったとき、

「誰の対応が悪かったの?」

という話にしないことです。

数字は、人を責めるためのものではありません。

現場を良くするための共通言語です。

次回来院率が下がったのであれば、

「なぜだろう?」

とチームで考えます。

予約が取りにくかったのかもしれない。

治療後の説明が足りなかったのかもしれない。

患者様が次に何をすればよいのか分からなかったのかもしれない。

あるいは、その治療自体が継続を必要としないものだったかもしれません。

大切なのは、

人を評価するために数字を見るのではなく、仕組みを改善するために数字を見ること。

私は、この考え方を大切にしています。


現場でよくある「次回来院につながらない瞬間」

例えば、施術が終わった患者様に、

「今日は以上です。お疲れさまでした」

とだけ伝えて終わっていないでしょうか。

患者様からすると、

「次はいつ来ればいいんだろう?」

「何回くらい受ければいいんだろう?」

「次は何をすればいいんだろう?」

という状態かもしれません。

そこで、

「次回は1か月後くらいに肌の状態を一緒に確認しましょう」

「今日の治療は3回ほど続けていただくと変化を見ていきやすいですよ」

「次回はこの部分を確認して、次の治療を一緒に考えましょう」

と伝える。

それだけで、患者様は自分の治療の先をイメージできるようになります。


次回予約は「営業」ではありません

スタッフと話していると、

「次回予約をおすすめするのが苦手です」

という声を聞くことがあります。

押し売りのように感じてしまうからです。

でも、必要な治療であれば、

次にいつ来院するとよいのかを伝えることも、大切な患者説明の一つ

だと私は考えています。

必要のない施術を勧めることとは違います。

患者様のゴールを一緒に考えて、

「次はこの時期に状態を見せてくださいね」

と伝える。

患者様にとって必要な道筋を示すことです。



次回来院率は高ければいい、ではない

一方で、私は次回来院率だけを追いかけることもおすすめしていません。

一回で完結する治療もあります。

患者様の希望によっては、継続治療を必要としない場合もあります。

治療によって適切な来院間隔も異なります。だからこそ、数字だけで「良い・悪い」を判断しない。

数字を見て、「なぜ、この結果になったのか?」と現場に戻る。この繰り返しが大切です。


次回来院率をスタッフの「成績」にしない

もう一つ、大切にしたいことがあります。

次回来院率をスタッフ個人の成績だけにしないことです。

数字だけで評価されるようになると、「患者様に必要だから次回をご案内する」ではなく、

「自分の数字を上げるために予約を取る」に変わってしまう可能性があります。

それでは本末転倒です。患者様にとって必要なことを、きちんと伝える。

その結果として次回来院につながる。

この順番を間違えないことが大切です。


自院を振り返るチェックリスト

数字について

  • 新規患者数だけでなく、次回来院率も確認している
  • 次回予約率と実際の次回来院率を分けている
  • 「次回来院」の定義を院内で統一している
  • 前月と比較して変化を確認している

患者様への対応

  • 治療のゴールを患者様と共有している
  • 次回来院の時期を具体的に伝えている
  • なぜ次回の来院が必要なのか説明している
  • 患者様が質問しやすい雰囲気をつくっている

チームについて

  • 数字が悪いときに誰かを責めていない
  • 数字の背景をスタッフみんなで考えている
  • 患者様が離脱したポイントを確認している
  • 改善することを一つ決め、翌月確認している

全部できている必要はありません。

一つでも、「ここを変えてみよう」というものが見つかれば、それが改善の第一歩です。


今月の「現場で考える問い」

スタッフミーティングで、ぜひ話し合ってみてください。

「初めて来てくださった患者様が、もう一度私たちのクリニックを選んでくださる理由は何だろう?」

価格でしょうか。

技術でしょうか。

先生でしょうか。

スタッフでしょうか。

それとも、安心感でしょうか。

正解は一つではありません。

大切なのは、スタッフ全員が「患者様がまた来てくださる理由」を考えることです。


数字の向こう側には、患者様がいる

私は、数字を見ることを大切にしています。

数字を見ると、クリニックの中で起きていることが見えてくるからです。

でも、数字だけを追いかけたいわけではありません。

次回来院率が60%なら、その60%の中には一人ひとりの患者様がいます。

そして、残りの40%にも患者様がいます。

なぜ戻ってきてくださったのか。なぜ戻ってこなかったのか。

そこを考えることが、クリニックを良くする第一歩です。

数字は、人を管理するためのものではなく、現場を理解するためのもの。

私はそう考えています。


おわりに

新規患者様との出会いは、とても大切です。

でも、その出会いを一度きりで終わらせるのか。

それとも、「またここに来たい」「ここなら安心して相談できる」という関係に育てていくのか。

そこに、クリニックの未来を左右する違いがあります。

新規患者数は「出会い」。

次回来院率は「信頼」。

そして、その信頼をつくるのは、現場で患者様と向き合っている一人ひとりの「人」です。

8月の記事でお伝えした「安心」が患者様の中に積み重なり、その結果が少しずつ数字に表れてくる。

だから私は、人が育てば、数字は変わる。そう考えています。

数字の向こう側にいる患者様を忘れずに、これからも現場からクリニックづくりを考えていきたいと思います。


美容クリニック現場支援パートナー
株式会社kakaワークスビルディング
樋口 果香